2012年8月30日木曜日

2012年仏オークス馬ヴァリラ、3戦無敗でこの世を去る

8月29日(水)、ドーヴィルのクレールフォンテーヌ競馬場でのレースをもって、夏のドーヴィル開催が終わりを迎えたのだが、そのドーヴィルから悲しい知らせが届いた。

 ドーヴィルで調整中だった今年のディアヌ賞(仏オークス)馬ヴァリラValyraが、調教の一環としてドーヴィル海岸を散歩していたところ、進路を変えようとした際にバランスを崩して転び、骨折した。すぐに集中治療室に運ばれたものの、手の施しようがなく、安楽死の措置がとられたということだ。
 ドーヴィル競馬場で行われた昨日の公開調教では、秋の最初の目標であるヴェルメイユ賞(9月16日)に向けて、順調に調整が進められているというニュースが報じられたばかりだったが、これが残念ながら彼女のターフを駆け抜ける姿を見る最後となった。生涯成績は3戦無敗というあまりにも短いキャリアで、競走馬としての幕を降ろさなければならなかったのは、一ファンとして残念だが、彼女の冥福を祈るばかりだ。


8月28日ドーヴィル競馬場での調教風景

 ヴァリラは4月16日ボルドーの競馬場でデビューした後、次走シャンティでの条件戦も連勝。2戦無敗でディアヌ賞に挑戦し、11番人気の低評価ながらも、先頭を行く一番人気ディープインパクト産駒ビューティーパーラーを、直線残り100mほどで差し切り、ディープインパクト産駒の仏クラッシック2冠を期待した日本のファンを歯嚙みさせたことで、われわれの心にはっきりとその名は刻まれた。


2012年ディアヌ賞


 管理するルジェ調教師は今年の秋はヴェルメイユ賞から凱旋門賞という青写真を描いていたようだ。3戦無敗のオークス馬ながらも、これまで1番人気に推されたことはない。おそらくヴェルメイユ賞で初めて1番人気を獲得し、先頭でゴールする姿を多くの人が思い描いていたことだろう。さらに凱旋門賞での現役最強牝馬デインドリームとの初対決。しかしもうその姿を見ることはできない。


ヴァリラValyra
父ノーザンダンサー系アザムールAzamour(2005年キングジョージ等GI4勝)、母はリファール系ヴァリマValima、母の父リナミックスLinamix。アガ=カーン殿下所有、J.-C.・ルジェ調教師の管理馬。
 生涯成績3戦3勝
  4月16日 ロベール・ミゴ賞(条件戦) 4番人気 1着
  5月18日 ブリュノー賞(条件戦)   3番人気 1着
  6月17日 ディアヌ賞(GI)       11番人気 1着

   

2012年8月27日月曜日

良血馬の素質開花! GIIドーヴィル大賞他2重賞

8月26日はドーヴィル競馬場で3重賞が行われた。結果的には夏の間に激しい戦いを繰り広げてきた馬たちの疲労度が勝負の分かれ目となった。ここから秋の飛躍を目論む3歳馬が活躍し、秋に向けて楽しみが増えた。

まずはGIIIモトリ賞(3歳上芝1200m)。一番人気に推されたのは、モーリス・ド・ゲスト賞5着の3歳馬レスティアダルジョンだったが、6着。勝ったのは8歳馬ジミースタイルズ。
父はクラリオン系インチナー。母はオーエンチューダー系イニヤレイク。2着にはガマルト、3着には9歳馬マリオールが入り、ここでは古馬が貫禄を見せつけた形になった。


 GIIIキャンセー賞では実績馬ティンホースと上がり馬フラクショナルがともに単勝5倍で一番人気。ティンホースは前走ジャック・ル・マロワ賞の疲れが抜けていなかったのか、いいところなく9着惨敗。3歳馬フラクショナルが人気に応えて重賞初勝利をあげた。これで5戦4勝。今後の活躍が期待できそうだ。前回触れたようにフラクショナルの半姉ニードルクラフトは繁殖牝馬として日本に輸入されており、フラクショナルの甥・姪が日本のターフを走ることになるが、こちらにも注目したい。2着はムーンウォークインパリス、3着は人気薄キングエアーとともに騸馬が入った。

今日のメインレースはGIIドーヴィル大賞。勝ったのは3歳馬マスターストローク。重賞未勝利ながらも同世代の実力上位馬と互角の戦いを展開していただけに、さほど不思議はないが、4番人気と評価はあまり高くなかった。父はブランドフォード系モンズーン、母はニジンスキー系メリカー。祖母は凱旋門賞を制し、ジャパンカップ(8着)にも出走したアーバンシー。つまりマスターストロークはガリレオ(英ダービー、愛ダービー、キングジョージ)、シーザスターズ(英ダービー、凱旋門賞等GI6勝)という偉大なる叔父をもつ良血馬。このまま凱旋門賞へ向かうとなると楽しみな一頭だ。
 2着にはゴスデン調教師のゲートウッド、3着はオーケーコラル。
 ゴドルフィン、A・ファーブル厩舎の主戦騎手ギュイヨンがマスターストロークではなく、こちらに乗ったことで、一番人気に押されたテネンバウムは7着と大敗。まだキャリアも浅いだけに巻き返せるか。

 3重賞のうち、ゴドルフィン、A・ファーブル厩舎のコンビで2勝(フラクショナル、マスターストローク)とイギリス馬に押されていた今年のドーヴィルだったが、なんとかフランス勢が一矢報いる形となった。

2012年8月25日土曜日

夏競馬の締めくくり ドーヴィル3重賞 第3弾 GIIドーヴィル大賞

26日のメインレース、GIIドーヴィル大賞(3歳以上芝2500m)。過去の勝ち馬にはリアルシャダイ(吉田善哉氏所有)、ホワイトマズル(伊ダービー)、スウェイン(英クラシック2冠、キングジョージ2連覇)など名だたる名馬が名を連ねている。昨年は2011年カルティエ賞最優秀古馬を獲得したシリュスデゼーグルが優勝。今年はどの馬が歴史に名を刻むのか。2500mという距離の対応がポイントになってくる。

 
 今後の飛躍への期待も込めて、3歳馬を中心に見て行こう。実績からみて一番手はトップトリップTop Trip。GI仏ダービー、GIパリ大賞いずれも5着と、同世代では上位。これに続くのがマスターストロークMasterstroke。これまで5戦3勝2着2回と安定した成績で、GIIオカール賞ではトップトリップから1/2馬身差の2着と力差はない。同じくゴドルフィン所有、A・ファーブル厩舎のテネンバウムTenenbaumは初出走こそ2着に敗れたものの、3連勝でオープン入り。今回が初重賞挑戦だが、ゴドルフィン+ファーブル厩舎の主戦騎手M・ギュイヨンはテネンバウムに騎乗することを考えれば、十分勝機もある。

 3歳勢に立ちはだかる古馬勢ではユズュエロUsueloが好調。前々走GIIIバルブヴィル賞で初重賞制覇、前走GIIヴィコンテス・ヴィジエ賞では2着と4歳馬になって充実してきている。前2走はいずれも3100mと長丁場のレースを得意としており、スタミナ勝負にもちこみたい。
 前々走2着、前走3着といずれもユズュエロに先着を許している、プレーリースターPrairie Starだが、2500前後の方が好成績を残しており、距離短縮は好条件。十分馬券圏内。
 不気味なのはゲートウッドGatewood。4歳馬ながら未だキャリアは浅く、7戦4勝。3歳時は3戦したのみ。4歳になって条件戦、準オープンを3連勝した後、初重賞挑戦となる前走GIIIグロリアスSで3着。まだ底を見せておらず、侮りがたい。


   馬名               斤量                  騎手
1 アライドパワーズAllied Powers    58.5kg       J・スペンサー 
2 ドンボスコDon Bosco                                58.5kg    O・ペリエ
3 ゲートウッドGatewood                             58.5kg                W・ビュイック
4 ユズュエロUsuelo                                      58.5kg                A・ハムラン
5 プレーリースターPrairie Star                  58.5kg                 C・スミヨン
6 オーケーコラルOk Coral                          58.5kg                 N・ペレ
7 ミスラーゴMiss Lago                                 57kg                   G・ブノワ
8 モリーマローンMolly Malone                    57kg       U・リスポリ 
9 トップトリップTop Trip                            55kg       T・ヒュエ 
10 マスターストロークMasterstroke           53.5kg                M・バルザローナ
11 テネンバウムTenenbaum                         53.5kg                M・ギュイヨン






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夏競馬の締めくくり ドーヴィル3重賞 第2弾 GIIIキャンセー賞

26日に行われる3重賞の第2弾はGIIIキャンセー賞(3歳以上芝1600m)。

 これまでGIを戦ってきた馬が実力の違いを見せつけるのか、それとも夏に力を付けてきた馬が、秋へとつなげるレースをするのかが見所。

 GI組の一番手はティンホースTinhorse。昨年のプーラン・デッセ・プーランの勝ち馬で、その後出走した5つのGIでは5〜6着をうろついているものの、前々走GIIIメシドール賞では2馬身差と圧勝。前走ジャック・ル・マロワ賞は勝ったエクセレブレーションから離れた6着に敗れたが、ここでは中心になる。
 2番手はソーファストSofast。2歳GIラガルデール賞でダビルシムの2着、GIIIギッシュ賞ではサンボドリーノの2着と、同世代一線級のなかでも好成績を残している。ジョッケクルブ賞では着外だったが、これは距離が長過ぎた。前走GIジャン・プラ賞ではイソップスファーブルの5着。ティンホースとの斤量2.5kg差で逆転可能か。

 今年に入って4戦2勝、前2走はGIIIで2着、3着と好調を維持しているムーンウォークインパリスMoonwalk in Parisは前走3着ながらも、ティンホースに4馬身半差の3着。ただこのレースでは2kg斤量が重かったこともあり、同斤量の今回はもう少し差が縮められる可能性はある。

 上がり馬のなかではフラクショナルFractionalとカラモスKalamosに注目。これまで4戦3勝、前走でオープン入りを果たしたフラクショナルは、前々走、3戦目で挑戦したGIIウジェーヌ・アダン賞(芝2000m)で3着。これで距離に見切りをつけたのか、前走リステッド・レースでは1600mできっちり勝ち上がった。(首差2着がカラモス)フラクショナルの姉はGIIIクロエ賞(仏)、GIIIセルジオクマニ賞(伊)を勝ったニードルクラフト。引退後は繁殖牝馬として日本に輸入され、ケープクロスCape Crossとの仔を受胎しているとのこと。この2頭が実績馬を相手にどんなレースを見せてくれるのか。秋のムーラン・ド・ロンシャン賞につなげるレースを期待したい。

     出走予定馬            斤量          騎手
1 ムーンウォークインパリスMoonwalk in Paris    60kg    C・スミヨン
2 ケーニッヒコンコルドKönig Concorde                  60kg    U・リスポリ
3 ティンホースTinhorse                                               60kg    T・ジャルネ 
4 ソーファストSofast                                                   57.5kg     O・ペリエ
5  スュルオルムSulle Orme                                          57kg     G・モッセ
6 キングエアーKing Air                                               57kg                 C・ルメール 
7 セレブリシムCélèbrissime                                        57kg                 F・プラ
8 サンディーズチャームSandy's Charm                    56.5kg     F・ベルトラ  
9 シャマルダンスShamardanse                                   55,5kg    T・バシュロ 
10 フラクショナルFractional                                      55,5kg     M・ギュイヨン 
11 ティフォンゴTifongo                                              55,5kg              M・バルザローナ
12 カラモスKalamos                                                    54,5kg              T・チュリエズ
13 ムーンデイサンMoonday Sun                                54,5kg              G・ブノワ
14 イポリットHippolyte                      54,5kg               S・マイヨ



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2012年8月24日金曜日

夏競馬の締めくくり ドーヴィル3重賞 第1弾 GIIIモトリ賞

 今週日曜は夏のドーヴィル開催を締めくくる(といっても28日までレースはありますが)ドーヴィル大賞他2つの重賞が行われる。今年は例年に比べて、涼しい日が多かった夏ですが、ドーヴィルが終わるとフランスは一気に秋になった気分。これからは凱旋門賞へと気持ちは切り替わる。

まずはモトリ賞Prix de Meautry(GIII3歳以上1200m)。抜けた馬がおらず、展開次第でどの馬にもチャンスはある。モーリス・ド・ゲスト賞組とそれ以外の馬たちの力関係がポイントになる。
 まずモーリス・ド・ゲスト賞組からはマルシャンドールMarchand d'Or(8着)、ケラソナKerasona(7着)、レスティアダルジョンRestiadargent(5着)の3頭。マルシャンドールはモーリス・ド・ゲスト賞3連覇(2006〜2008)を成し遂げた歴史に残る名馬であり、昨年も同レースを制しているが、現在すでに9歳。さすがにスピードは衰え、近走は全盛期の影を見ることはできない。レスティアダルジョンは、前走こそムーンライトクラウドに離されたものの、前々走ダイアモンド・ジュビリーSでオーストラリアの女傑ブラックキャビア、ムーンライトクラウドに次いで3着(短頭差、首差)と、超一流馬とも互角に戦える力は秘めているだけに、ここは勝っておきたい。

今年のドーヴィルではイギリス勢の活躍が目につくが、ベストオブオーダーBest of Orderは前走GIIIパレ・ロワイヤル賞で8着とはいえ、勝ったムーンライトクラウドからは約5馬身差とモーリス・ド・ゲスト賞組とさほど差はない。先週レックレスアバンドンでモルニ賞を制したコックス調教師が送り込むのはジミースタイルズJimmy Styles。前走ダイアモンド・ジュビリーSは13着と大敗したものの、3走前にザチェカThe Cheka(モーリス・ド・ゲスト賞3着)と一馬身差の2着と、実力が発揮できれば上位進出もありうる。

 近走重賞で4着(GII)、4着(GIII)、2着(GIII)と好走を続けているシャマルガンShamalganも侮れない。前走は1600mから1400mへと距離短縮が功を奏してマショーラ(ロートシルト賞3着)の半馬身差。さらに1200mへと縮めたことが吉とでるか。
 ガマルトGammarthは前々走GIIIリス・オランジス賞がロックウッドLockwood(モーリス・ド・ゲスト賞6着)の2着。モーリス・ド・ゲスト賞5着から7着は僅差だけに、実力はさほど開きがあるわけではない。

 接戦が予想される本レースだが、3歳馬の活躍に期待して、レスティアダルジョン、ケラソナ、あとは好調なシャマルガあたりが有力か。

      出走予定馬          騎手 
 1 マリオール Mariol          T・ジャルネ
 2 マルシャンドール Marchand d'Or     D・ボニヤ
 3 ジミースタイルズJimmy Styles       G・モッセ
 4 ベストオブオーダーBest of Order     M・バルザローナ
 5 ファイアービーム Firebeam        T・チュリエズ
 6 ガマルトGammarth           C・スミヨン
 7 ルヴァランタン Le Valentin      A・クラトゥス
 8 シャマルガンShamalgan                             G・ブノワ
 9 スイスドリーム Swiss Dream      W・ビュイック
 10 スイススピリット Swiss Sprit                    J・スペンサー
 11 ケラソナKerasona           C・ルメール 
 12 レスティアダルジョンRestiadargent        M・ギュイヨン
 13 バルバヤム Barbayam        O・ペリエ




 


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2012年8月23日木曜日

2000でも怪物! インターナショナルS フランケル圧勝

フランケルの登場で例年以上ににぎわったインターナショナルS。これまで1600mまでは無敵のフランケルが約2ハロン距離が伸びてもやはり怪物なのかどうかということに、注目が集まりましたが、全く問題なし。一頭だけ次元の違うレースぶりで連勝を13に伸ばしました。

 レース映像はこちら

 道中は後方からでしたが、4角から直線にかけて徐々に進出すると、他馬が必死で追っているのを尻目に馬なりで先頭。残り300ほどで追い出してからはぐんぐん差を広げた。これほどの勝ち方を見せられると2400mではどうなのかとか、まだまだ興味が駆り立てられますね。

 2着は前走同様ファーFarhh。3着はオブライエン調教師の管理馬セントニコラスアベイSt Nicolas Abbeyと順当な結果でした。


 


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2012年8月21日火曜日

スノーフェアリー復帰戦 GIジャン・ロマネ賞

 小雨がぱらつくなか行われた今年のジャン・ロマネ賞。ロートシルト賞を勝ち、ジャック・ル・マロワ賞でも好走したイリューシヴケイトを前走ファルマス賞で破っているジオフラGiofraが、2000mに舞台を移してどのような競馬を見せてくれるのかに注目が集まったが、結果的には距離延長が裏目にでて、6着と惨敗。前々走ガネー賞(2100m)でも2着と必ずしも中距離で実績がない訳ではないものの、これは勝ったシリュスデゼーグルCirus des Aiglesに8馬身ちぎられてのもの。これで陣営としては、中距離に見切りをつけ、秋の目標をムーラン・ド・ロンシャン賞に定めるのではないか。


ジオフラGiofra


 道中好位につけ、一度は先頭をうかがうものの、差し馬2頭の切れ味に屈したガリコヴァGalikovaは、さらに距離が伸びていいだけに、次の目標はヴェルメイユ賞(2400m)か。

 勝ったのはスノーフェアリーSnow Fairy。実績からは一番人気に推されてもおかしくはなかったが、今年初戦ということが懸念されて3番人気。しかし直線の切れ味は抜群で、先頭のガリコヴァを一気に交わした。これで凱旋門賞馬デインドリームDane Dreamとの女傑対決も楽しみになるが、果たしてこのまま凱旋門賞へ向かうのか、それとも再び日本に渡り、エリザベス女王杯3連覇を目指すのか、今後の動向が気になる。しかしこれまでの成績を見る限り、硬い馬場、牝馬限定戦の方が良さそう。昨年のエリザベス女王杯では検量の問題でケチのついた形になったので、今年ははっきりと強いところを見せて欲しい。

スノーフェアリーSnow Fairy



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